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サポテックラグとは

メキシコ南部のオアハカ州の先住民であるサポテコ族の伝統的な毛織物で、平織りの一種であるつづれ織です。

つづれ織りとは織物の技法の一つで、世界でもっとも原始的な織物と言われ、その素材は、麻、羊毛、絹など様々です。その起源は紀元前15世紀のエジプトのコプト織りまでさかのぼります。日本にはシルクロードを通って、飛鳥時代に伝わったと言われています。現在の日本のつづれ織りでは、江戸時代から続く西陣織が世界的にも有名です。

サポテックラグはサポテコ族の織物なので、サポテックラグと呼ばれています。また、メキシコ国内ではタペテと呼ばれたり、オアハカ州の織物ですので、オアハカラグとも呼ばれてもいます。ナバホ族のナバホラグとルーツを共有していますが、ナバホラグよりも厚みがあり強くしっかりしているのが特徴です。

「高品質なサポテックラグの特徴」

1) ウール100%

2) 手紡ぎの毛糸を使用

3) 天然草木染であること

4) 足踏み式水平織り機で経験ある優れた職人が手織りすること

観光客向けの土産品などは、アクリル素材の混紡や粗悪な毛糸が使用されていたり、合成染料のものを天然染料と偽って販売されていることが散見されますので、弊社では信頼できる染色織物工房の作品のみお届けいたしております。

「サポテックラグの歴史」

中世大航海時代の1521年スペインがアステカ帝国を征服し、オアハカ州のテオティトラン村に、毛織物に適した羊と、足踏み式の水平織り機を持ち込み、サポテコ族が毛織物を作り始めたのがはじまりです。

1800年代後半に、人工の染料が発明されるまでは、世界の染織はすべて草木染でした。中世ヨーロッパでは、赤い染料が貴重であり、王侯貴族達でないと身につけることができない神聖で権力を象徴する色でした。当時も橙や朱色などは存在しましたが、色落ちせず深く落ち着いた赤い染料を探し求めていました。

そんな中、メキシコの南部オアハカ州で、ヨーロッパの征服者たちが探し求めていた赤い染料となるコチニールが発見されたのです。コチニールとは、うちわサボテン(スペイン語でノパル)に寄生する微細なカイガラムシから抽出される色素です。 

戦国時代の日本にも、大航海時代の通商貿易によって、メキシコから輸入され戦国大名たちの陣羽織を赤く染められました。

コチニールの深く落ち着いた赤色は、日本では、朱色と区別して、緋色(ひいろ)、又は猩々緋色(しょうじょうひいろ)と呼ばれています。 猩々とは、歌舞伎の演目にも登場する想像上の動物で、猩猩緋色とはその血の色という意味です。

テオティトラン村中心にある1600年代にスペイン人によって建設されたカトリック教会

「手紡ぎの良さについて」

サポテックラグの良さは、手紡ぎの毛糸を使用していることと言っても言い過ぎではありません。よくウール100%ラグという謳い文句を世間で耳にしますが、本物のサポテックラグは、羊毛の質が良いだけではなく、その毛糸を手紡ぎしているからなのです。

イギリスの古いツイードや、明治期に日本の東北地方に伝わったホームスパン(HOMESPUN)と同様に、「家庭で紡がれた」羊毛にその良さがあります。
もともとのツイードジャケットは祖父、父、息子と三代に渡って受け継がれるほの丈夫さが特徴です。 いま製造されているツイードはすべてが手紡ぎではないそうですが、伝統的な手紡ぎで作られたツイードの毛糸はざっくり太くて、人間の絶妙な手の感覚で毛糸が紡がれます。
また、日本の結城紬も絹と羊毛の違いこそありますが、親子三代着て最高の味になるといわれている通り、強くしっかりとした手紬ぎが特徴です。

左手に持った羊毛を指先から送りだしながら、右手で糸巻きを回転させています。指先から出たその瞬間から羊毛は毛糸に生まれ変わります。

手紡ぎの毛糸は、糸を巻き取る力が人間の手で常に調節できますので、テンションが強すぎず、ふっくらざっくり太めの糸に仕上がります。 

機械紡績で作る毛糸は、構造上一定の強さで糸を引っ張らざるを得ないため、毛糸のテンション調整ができず、比較的固めの毛糸になります。 
逆に手紡ぎの場合は、表面は張りがあり、中心部分は弾力性のある柔らかい毛糸になります。ですから、ウールラグは肌触りが良くないというイメージを抱いている方も、サポテックラグを手に取って、手紬ぎの毛織物のイメージが変わったと驚かれます。

「つづれ織りの手仕事」

染織が終わって天日で乾かされた糸は、重い木製の織機で手織りされます。白いタテ糸を織り機にピンと張り込み、染色されたヨコ糸を交互に織り込んでいきます。 タテ糸はラグの表面に現れずヨコ糸だけで図柄を表現します。
複雑な図柄の場合は、沢山の横糸を手作業で打ち込んでいきます。

簡単なデザインの場合は、ペダルを踏み込みタテ糸が一本おきに上下に開いた杼口に、シャトルでヨコ糸を一気に飛ばすこともできますが、複雑な絵柄の場合は、その色ごとに手作業で筒形のボビンをタテ糸をすくい上げ通していきます。

ヨコ糸が通されるたびに、リード(筬)でトントンとしっかりと横糸を手前に打ち込寄せます。サポテックラグはヨコ糸を男の強い力でトントン詰めていくため丈夫でしっかりとした織物になるのが特徴です。

イサック・バスケス氏が、後ろの小さな椅子に乗せられた帽子のつばの色を出してほしいという顧客からの要望に応えてインディゴ染めを行っている様子。

ボビン(糸巻き)と 使い込まれたシャトル(杼)

「織りあがったラグの仕上げ」

羊は草原を歩きながら毛にたくさんの草が付着しますので、紡ぐ前に丁寧に洗われますが、織りあがった後にも、小さな草の破片などをピンセットで見つけては丁寧に取り除いていきます。愛情のこもった最後まで一貫した手仕事は、オアハカ州のゆったりとした時間の流れの中だからこそです。

幅4メートルのラグを織っている様子、柄はカラコルという 古代の遺跡に刻み込まれたレリーフのデザイン

「伝統的技術による一貫した手仕事の工程」

このようにすべての工程が手仕事によって作りあげられますので、ラグのサイズやデザインの複雑さ、また工房の繁忙状況にもよりますが、一つのラグが完成するまで3ヶ月から半年以上もかかることがあります。

工房には、常にヨーロッパやアメリカなど海外のインテリアやフォークアートディーラーやバイヤーが集まりますので、工房に作品のストックが少なく、ほとんどが受注生産になっています。工業製品と異なり、すべての作品がある意味一点ものなのです。

  • 1.刈り取った羊毛の洗浄

    自然由来の木の根を石臼で砕いて洗剤として使います。石鹸よりも強いアルカリ性の苦みでウールにつく虫よけにもなるという先住民の知恵。村の人は今も自然のシャンプーとしても活用しています。

  • 2.ハンドカーディング

    専用の櫛で羊毛の毛足を整え梳き羊毛を綿状にする

  • 3.手紡ぎ

  • 4.天然草木染

  • 5.手織り

  • 6.織りから降ろした後のフリンジの撚り合わせと細かい仕上げ作業

サポテックラグは、それぞれのファミリー工房で、5世紀にわたって受け継がれた伝統的技術を守りつつ、いまもなお世界中の織物職人たちとの交流を通じて、その技やデザインを深化させています。

アメリカ大陸のインディアン(先住民)たちの文化人類学的な価値のある世界的に知名度の高いフォークアート作品をぜひお買い求め頂けましたら幸いです。

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